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2004年03月05日
嘘六百・第44回
古人曰く「李下に冠を整さず」
李《すもも》の木の下で帽子をかぶり直していると、まるで李を盗んでいるかの様に見えて疑われてしまう=疑われそうだと判っている行為を慎まないのはバカモノだ、の意
とは謂うけれども、あえて渾身の力を込め、帽子をかぶり直す大バカモノになりたい時だって、ある。
――何の話か。実は「Game Developers Choice Award」の話だ。今回は、新ハードの話を1回中断して、このアワードの話をさせていただきたい。
ちょうど1年前、この連載の第21回でもChoice Awardの話題に触れたのを、皆さんは覚えているだろうか。
このアワードは、一言で云えば「世界中のゲーム制作者が投票するゲーム賞」。売れたゲームに票が偏りがちなユーザー投票の賞とは違い、こちらは歴史こそ浅いものの、プロの目から見て「革新的」で「優れた」ゲーム(あるいはクリエーター)を選び出す事には定評がある賞だ。
中でも、昨年「携帯ゲームの父」故・横井軍平氏が、ゲーム業界に多大な貢献をした人間が受けるLifetime Achievement Award――特別功労賞(私に云わせりゃ「生き様賞」)を受賞したのは、皆さんの記憶にも新しいところだろう。
英語圏が主体のアワードで、まさか横井氏が受賞するとは――あれには日本中が度肝を抜かれ、同時に快哉を叫んだのではないだろうか。「外人、粋な事しやがる!」と(笑)。
で――既にニュースで御存知の方も多いだろうが、今年の「生き様賞」を、この連載でも採り上げた「ガチャっと切って、ピカっと閃く」盟友マーク・サーニーが受賞した(する)のだ。
この選出に、誰が文句をつけられよう。二十歳前から「マーブル・マッドネス」をはじめとした、ビデオゲームの古典とも云える名作を創り出し、セガ時代には「ソニック2」、ユニバーサルでは「クラッシュ・バンディクー」や「スパイロ」を自らのリーダーシップで大成功させ、さらにはPS2のシステム開発にも携わり、そして「ジャック×ダクスター」や「ラチェット&クランク」では、システムプログラムとゲームデザインのコンサルタントを務め――選考委員会でも異論は一切なく、満場一致で決定したのだった、「彼こそが相応しい」と。
――なんで選考の様子を私が知っているのかって?
いやね…実は白状しちゃうと…今年は私も、19人いる選考委員の中の一人だったりするのですわ(汗)。
なので選考中、色々な考えが頭を過ぎって、マジ葛藤。「よりによって俺が選考委員になった年にマークが選ばれたら、身内ビイキって非難されちゃうかなあ。俺がノミネートした訳じゃないけど、せめて投票は棄権すべきかなあ」とかね。
でも、身内だからこそ誰よりも解る、彼の凄さ。お手盛りだヒイキだと誹られたって構わない。李の木の下で、帽子をブンブン振り回す大バカモノとなって叫んでやろう、「マークこそが相応しい!」。そう考えた私は、正々堂々胸を張って、彼に一票を投じたのであった――。
おめでとう、マーク!
というワケで、Mark Cernyが今年のLifetime Achievement Awardを受賞するコトは1月の時点で判っていたんだけど、やっと情報解禁の運びとなりました。何がツラいって、Mark本人にも秘密にしなきゃいけなかったのがツラくて(笑)。
ちなみに今回、嘘六百以外にも、JAK2日本版公式ページでもMark受賞の報について書いたし、IGDA東京支部にポストされた、受賞報の日本語訳も書いたのであった。それぞれの原稿ごとに自分の立場が違うから、ちょっと混乱気味だったかも(わはは…笑)。
やろうと思えば、この賞の発表に合わせてJAK2を大々的にプロモーションする、というのも出来たんだろうけど、発表時期はアメリカのIGDA次第だったので、イマイチ上手く連携できなかったかな。うーん残念。
でも、連携があまりに上手く行きすぎてたとしたら、それはそれでインサイダー疑惑が持ち上がっていたのかも(笑)。
ところで、直後にMarkと飲んだ(のみゅにけーしょん!)んだけど、Markは俺が選考委員をやってたのは知らなかったそうです。
投稿者 tsurumy : 2004年03月05日 06:00
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