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2005年03月12日

GDC(3月11日)/私が悪うございました

いよいよGDC最終日。朝は早いけれど、今日のサンフランシスコは東京で云えば5月中旬ぐらいの陽気なので、既に身体の活性も上がっている。頭脳も明瞭な気がする。いったるぜ。

"International Game Designers Panel"
Mark Cerny (Moderator), Toru Iwatani, Clint Hocking, Tetsuya Mizuguchi, Alex Rigopulos

アメリカ人・日本人交えてのパネル・セッション。なので、日本語もペラペラのMarkは、司会としてはまさに適任だ。進行は基本的には、Markが準備した質問に全員が順番に答えるというスタイル。実際、「ディスカッション」と云えるほどのやり取りにはならなかったが、立場の違いによる意見の違いがかなり際だっていて、面白かった。

お楽しみは後半の「聴衆の質問に答える」時間。ここで面白い質問が飛び出した。

「志が売上げを越えてしまったソフトについて」


つまりは、志(ヴィジョン)は高かったが売れなかったソフトについて意見を聴かせろ、というコトだ。うむむ直截なり。

ICO、REZ、塊魂――評価と売上げが懸け離れているソフトは数多い。もちろんマーケティングの問題は多分に含むのだが、ゲームデザイン面での評価もを避けるべきではないだろう。

しかし指名された水口は、「ツキ」という言葉を口にするに留めた。マーケティング的な問題や、社内(あるいは対パブリッシャー)政治的な問題が大きく、ゲームデザイン・セッションには相応しくないと判断したのかもしれない。ただ、鶴見的にはホットな話題(2日前にパーティで別の人間と盛り上がった話題なのだ)だったので、それを「ツキ」で片づけられてしまい、かなり残念。つうか、失敗の原因は分析してあるんだろうから、披露して欲しかったなあ。

ちなみに鶴見も、「続編~新規集客とお得意様商売のバランス」について質問させていただいた。主に、「Splinter Cell」のClint Hocking氏に訊きたかったのだ。これについては鶴見にもいささか経験はあり、現在進行形で考え中。いずれ披露するコトもあるだろうから、今回は割愛。

"The Future of Content"
Will Wright

さてGDCの目玉! 長蛇をなす聴衆の列! 足の踏み場もないほどの人!人!人! そう、Will Wright氏の講演だ!


なんと云ったらいいんだろう。単に新作ソフト「Spore」のプレゼンを観ただけなのに、生半な映画では及びもつかないような、驚きと笑いとワクワクと、知的好奇心の充足を味わったのだ。一言で云えば

感動


それだ。「2001年:宇宙の旅」と「あなたの魂にやすらぎあれ」と「Mars Attack!」に「寄生獣」を足したぐらいの感動だ。

スクリプトによって手続きを記述されたパーツ・オブジェクトが、トポロジカルに組み合わせられるコトによって、多様かつ魅力的な変化形を見せる、人工生物。

その生物が、「バクテリア」から「銀河の神」へと進化してゆく過程で、「Pacman」→「Diabro」→「Populous」→「SimCity」→「Risk」/「Civilization」→???、と重層的に変化してゆくゲーム性。

プレイヤーの作ったデータを吸い上げ、それを再配布するコトによって、各プレイヤーの銀河が満ちてゆくという、メタ・アーキテクチュア。「Polynation」。

謂わば、ユーザーの数だけ進化した星々が並ぶ「恒星間動物園」。それをマクロからミクロへと一気に覗く、顕微鏡視的な楽しみ。つうか、

ドラえもんのひみつ道具
地球セットが集まった銀河

いやもう、他のどんなメディアでも味わえないような体験ですよコレは。そして、世界中でもWill WrightとEAのタッグ以外では創造出来ないような、そんなゲーム。今の俺には作れません。誰にも作れません、たぶん。藤子F先生とWill Wrightにしか思い浮かびません。まさにゲーム。これぞゲーム。自分のやっている仕事が小さく見えます。平伏です。参りました。

私が悪うございました。
買うから許して。

"Attack of the Design Directors!"
Brian Allgeier

「ラチェット&クランク3」のゲームデザイン・ディレクター(チーフね)を務めた、Brianの講演。彼のプレゼンテーションの解りやすさ・面白さには定評がある。

ちなみに、講演直前に鶴見が、「Attack the Design Directors!(デザイン・ディレクターをやっつけろ!)」と「Attack of the Design Directors!(デザイン・ディレクターの攻撃!)」のどっちなんだ!?と、Brianに対して冗談で訊いたトコロ、ヤツはちゃっかり講演の最初でそれを使いやがった(笑)。いやいや、なんとも光栄であります。

内容は、ゲームデザイン・チームを運営してゆく上で立ちはだかる問題群を「モンスター」に喩え、また一方で、ゲームデザイナーが留意すべき4つの点「Cohesion(結束力)」、「Marketability(市場性)」「Feasibility(実現可能性)」「Innovation(革新性)」を

『特攻野郎Aチーム』の4人に喩え(笑)、


ラチェット&クランク3において、とある問題をどのようにクリアしたのか、

本人出演による再現写真で


説明したのだ。聴衆は爆笑と拍手の渦。いやはや、一昨年の「地下駐車場で殴り合って和解」という再現写真にも笑かしてもらったが、相変わらず念の入ったコトだ。

ちなみにこの講演、プロジェクト・マネージメントとゲームデザイン・ワークとを、高いレベルで両立させるためのケース・スタディであるからして、先日のGame Developer Magazineに書かれたプロジェクト全貌についての後日談と併せてみると、非常に興味深い。後からでも資料は手に入るはずなので、ぜひ併読をお薦めする。だが飛行機だけはカンベンな!

【追記】
最初の"International Game Designers Panel"については、インプレスのGame Watchに詳しいので、そちらを参照されたい。

カテゴリー: 六百式見聞録

投稿者 tsurumy : 2005年03月12日 08:43

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