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2005年03月03日
杜撰な審査で有害図書指定ってどういうコト!?
ゲームも有害図書指定されちゃうコトの続きを、追記ではなく、別エントリーで書きたい。この件について調べていたところ、驚くべき内容が判明したのだ。
県が選定した複数のソフトを五月の児童福祉審議会・社会環境部会(部会長・上田滋県少年補導員連絡協議会会長)で審査し、松沢成文知事が個別に有害指定する。(中略)同課は「当面は『バイオハザード』のように、人気があって手に入りやすいソフトが指定対象の候補になる」と話している。ただ、詳細な指定条件はなく、「審議会の委員に委ねることになる」のが実情。青少年課は「暗中模索でとにかく試してみようということ」と説明している。五月の審議会では、委員の前で実際にゲームを行い、個別指定するかどうか判断を仰ぐ。
もう、ツッコミどころ満載で、どこから指摘すれば良いのやら。元記事を読む限りでは、まったく杜撰な審査だとしか云いようがない。
そもそも、神奈川県児童福祉審議会は、ゲームを審査するに相応しいシステムを持っていないだろう。確かに、CEROのレーティング審査でも、審査員は一般から募集で集まった方々だ。だが、その審査はCERO倫理規定に基づいて行われている。倫理規定はもちろん、社会通念を考慮し、有識者を交え、十分な検討を経て作成されたモノだ。「倫理規定+一般人の審査」は世界的にもベストなメソッドだと考えられている。それを神奈川県は、詳細な指定条件無しで、審議委員という半可通が(云ってしまえば「恣意的に」)審査すると云う。正当と認められている審査方法からは懸け離れた、著しく公正に欠くやり方だと云えよう。
審査材料だってそうだ。CEROの審査の際に、我々はシナリオや映像のビデオを提出する。ゲーム全体を公正に審査して欲しいからだ。だが神奈川県では「委員の前で実際にゲームを行い」と、ゲームメーカー側の協力を得ないコトを前提としている。それでは、ゲームの極一部しか分からないだろう。つまり委員は、ゲームの極一部を見ただけで、そのゲームソフトが子供に与える影響を「推測」するしかない。そんなコトが正確な審査が出来るのか。
だいたいだ。一部の人気のあるゲームソフトのみを槍玉に挙げるのでは、実効性はないに等しい。というのも、人気のあるソフトは通常、社会的影響に配慮して、そう過激な表現は行わない(行えない)ものだからだ。名前の挙がっている『バイオハザード』なんかは、その最たるモノだ。かなりの葛藤の跡が見えるぞ(笑)。いやまあとにかく、過激な表現はむしろ、限られたユーザー向けのディープな作品、あるいは後発の作品に多い。ってのは云い過ぎだが、何にせよ、審査は網羅的に行わなければならないのではないか。
ましてや、「暗中模索でとにかく試してみようということ」この考え自体が、杜撰の誹りを免れまい。せっかく、CEROという特定非営利活動法人が、審査の公正さを保つためにCESAともゲームメーカーとも繋がらない「第3者機関」として存在するのに、
ゲームソフトは現在、「全年齢」「十二歳以上」「十五歳以上」「十八歳以上」の四種類の年齢区分マークがパッケージに表示されている。ただ、業界の自主規制で購入の目安にすぎず、「店頭でも区分陳列されていない」(同課)という。
としてしか捉えていないのだから、もう何をか云わんや、だ。何故、CEROのレーティングを積極的に活用しようとしないのだろう。それがいちばんの近道なのに。この分では、今回の「有害図書指定」を決めるに至った経緯も、さぞかし杜撰であったコトだろう。
重ねて云う。鶴見の考えでは、本来あるべきは、CEROによるレーティングが、メーカー・販売店の協力の下で、社会的な信頼を得るコト(そのために必要ならば「成人指定」もやむない)。家庭においても、こうしたツールを活用し、子供とゲームとの上手い付き合い方を「親自身が考える」コト。
胡散臭い条例は要らん!
以上。
【追記】
更に調査を進めたトコロ、どうやら「有害図書指定」の「個別指定」という方法が採られるらしい。(参考→「有害」規制監視隊)
CEROの「18才以上推奨」を一律に指定するようなやり方を「包括指定」と云うが、個別指定ならば、包括指定よりも、より強力な規制を行うコトができるのだ。そして過去の例では、個別指定の「強力な規制」での実績に基づいて、さらに規制の範囲は広がってゆく、らしい。
杜撰どころではない。緻密な計算に基づいてCEROを無視し、ゲームバッシングが高まる気運に乗じて、ゲームに対し悪意・敵意をぶつけてきているのだ。背筋が薄ら寒くなってきた。なんだか、「人民は弱し官吏は強し」(星新一)を思い出したよ。
【つうか】
CERO頑張ってくれよ。
【追々記】
東京都千代田区が路上禁煙条例を、非民主主義的かつ世論迎合的なやり口で決めた時、鶴見は
タバコを吸わない方々も、この知恵の無い理不尽な仕組みが、いつか貴方に牙をむくと心得ておくがいい。
と書いた。今回の有害図書指定も同根だ。徐々に、徐々に、いろんなモノが、社会正義の名の下に、踏み潰されてゆく。
【追々々記】
この文章、かなりイイです→残虐ゲームもポルノも、大人が享受できる特権でいいじゃん。世間の親御さんが全て、こんなだったら良いのに(ついでに、ラチェットを遊んでくれていたら、云うコト無しだったんだけど…笑)。
投稿者 tsurumy : 2005年03月03日 18:00
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コメント
TBありがとうございます。
うわー…何だこりゃ。「暗中模索でやってみよう」って、人の創作物ジャッジする動機にするなんてありえませんよ。背筋から悪寒が全身に走りました…こぇー…何も作れないじゃないですか、それじゃ…。モノ作りできなくなる恐怖…地獄よりおっかない世界だ…。
投稿者 dummyx : 2005年03月03日 21:03
Yahoo!に載ってた記事では、『殺人や暴力などを美化した描写を「有害」と定義する。』って書いてあるんですよねぇ。じゃあ、格闘ゲーム・戦争ゲームすらダメぢゃん(笑)。空手やボクシングすらまずいかも。
まぁ、何をもって「美化」とするかも判らないしなぁ。
投稿者 御熊様 : 2005年03月05日 08:52
もう一個問題がありまして、審査方法ですが、職員がプレーした映像を10分ほどに編集したビデオを見て審査したそうです。
この方法であれば、悪役の悪である部分を強調する演出部分を編集でつなげれば大抵のものは規制対象にすることが出来ますね。
また、審査委員は心理学の専門家や、ゲーム等の専門家や、表現等に関しての有識者でもないただの福祉関係の専門家だったようです。
この人たちが中立の立場で審査したとはとても思えないのですよね。
「ゲームが悪いんだ、われわれは悪くない」という立場で審査したようにしか思えないあたりも問題だと思います・・・
投稿者 らぃ : 2005年05月31日 10:23