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2005年06月11日

「頑張れCERO!」のコト

神奈川県、残虐ゲーム「有害」に(日経新聞5月30日付)

神奈川県は三十日、カプコン(大阪市)が販売するソフトを有害図書類に指定し、十八歳未満の青少年への販売を禁じる方針を固めた。ゲームソフトが有害図書類に指定されるのは国内初。業界にはこれまでの自主規制の甘さを指摘する声もある。
ゲーム業界では業界団体のコンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主導して、評価機関を設立。内容により「十八歳以上」とするなどの自主的な審査制度を導入している。ただ、同制度はソフトのパッケージに注意書きを記載する程度。一部ゲームメーカーの間では「店頭販売のあり方についても自主規制を整備する必要がある」との指摘もある。


3月3日のエントリーでも書いたが、鶴見はゲームを「有害」扱いするような思考停止的なレッテル貼りには強い不快感を覚えるが、とはいえ、「成人向け」の商品が成人以外の目に触れないような社会環境の整備は、あって当然だと考える。

そういう意味では今回の神奈川の条例も、条例自体と運営方法と審査の不明確さには到底納得出来ないものの(参考→有害ゲーム定例記者会見の疑問点 (はえのおう))、自主規制の甘かったゲーム業界の重い腰を動かす外圧、いわば「青天の霹靂」としての価値はあったのかなあ、と思っている。事ある毎に書いているが、日本社会の中で認知は高いが地位は低いビデオゲームを、産業規模相応の地位に引き上げるためには、社会との軋轢を一つ一つ丁寧に取り除いていかなければならないのだから。


で、CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)だ。

今回の神奈川の措置に関するWEB上の言論を眺めると、CEROの無力さを非難する書き込みが散見されるばかりか、CEROをゲーム業界の癌呼ばわりするトンデモ発言まで大手サイトから飛び出しているのだから、呆れてしまう。


有害図書類指定にカプコンが反論、SCEIが独自の動きに、コナミは反発必至か!?(まこなこ)

CEROが無ければソニーコンピュータエンタテインメントなり任天堂なりがしっかりと基準を作り、問題のあるソフトの分別販売などが可能なんだろうけど。ほんと、CEROがゲーム業界の癌ですな。


もちろん、呆れているのはCEROに対してではなく、こうした無定見な暴言に対してだ。

CERO設立に当たって行われた、ゲームソフトにおけるレーティングシステム構築のための調査や、「ゲームの社会的受容の研究―世界各国におけるレーティングの実際」(白鳥令/東海大学出版会)のどちらかを読めば解るのだが、「レーティング」というのは、社会との摩擦を避けるために、社会に対して発信されるべきものであり、社会に対しての公正さを担保するためにも

設立された審査機関に対しては(中略)決してエンターテインメントゲームソフトウエア業界の立場からは影響を行使しないという自制的態度によって示されるのだといえよう。(ゲームソフトにおけるレーティングシステム構築のための調査より)

――と、第三者機関によって行われるべきなのだ。そして実際、CEROは(そしてESRBも)そうなっている。例えCEROのレーティングが、ゲームプレイヤーの立場からは納得しづらいものであったとしても、社会の目を基準に公正さを発信する責を負っているのだから、そこに文句を云うのはお門違いだ。むしろ、そうした情報を有効活用していなかった流通側に問題があったと云えるだろう。CEROの責任ではない。


CEROの「レーティング」とは…

例えば自分でゲームを遊ぶ親御さん(→こちらのような方)にとって、今回の「GTA3」が、子供に遊ばせるのにはチョイ早いゲームだというコトは、もう当然が無論の常識だ。

だが、大半の親御さんにとっては(そして鶴見が個人的に飲み屋でよく会う小学校の先生達にとっても)、そうではない。ゲームというのは、子供を惹き付けるハーメルンの笛吹のように、得体が知れないモノなのだ(だから、「ゲーム脳」とかのトンデモ論にも飛びついてしまう)。そして、そんなゲームを知らない親御さんにも、ゲームsavvyな親御さんが気づく程度の知識――「GTA3は、子供に遊ばせるにはチョイ早いゲームだよ」、そんな情報を与えるのがレーティングなのだ。

今回、CEROレーティングの基準自体をウンヌンする発言も多数見受けられたが、ゲームってのは社会にとっては依然として「得体の知れないモノ」なのだから、基準が厳しくなるのは当然かな、と思っている。もちろん、レーティングは社会通念をベースに基準が決められているはずなので、ゲームが社会的に認知されてゆく過程で、納得性の高い形に改められていくだろう。


なんにせよ、日本のレーティング制度は2002年に立ち上がったばかりで、まだまだ「途上」だ。漫画ジャンルで云えば、手塚治虫が「やけっぱちのマリア」で「俗悪」の烙印を押されていた頃に相当するだろうか。つまり、ゲームの進化に社会的な認知が追いついていない状況だ。以前の嘘六百にも書いたが

何にせよ、レーティング制度は一般社会に認知されなければ効力はありません。ESRBは、ほぼ10年近くかけてやっと成熟し「バイオレンス」というジャンルを売り上げランキングのトップに送り出しました。しかし日本のレーティング制度は始まったばかりです。

今回のような事例を幾多経て、2012年頃には、ゲームの地位も向上し、ゲーム表現の自由度も確保されていると信じたい。そのためにも…

頑張れCERO!


【追記】
なんとはなしに、松沢神奈川県知事のブログにトラックバックを打っておく。

カテゴリー: 新・嘘六百

投稿者 tsurumy : 2005年06月11日 11:13

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» グランド・セフト・オート3が有害図書に from Picasoのぴー
神奈川県の県児童福祉審議会でゲームソフト初の有害図書類として、 「グランド・セフト・オート3」が指定されました。 18歳未満への販売/貸し出し、店頭での陳列方... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月12日 02:22

» 自主規制の果てに残るものは from Cepter's Inn.
神奈川県によるGTA3の有害図書指定に対してカプコンは法的対応も視野とコメント。 それに対してSCEは自主規制を強化する方針で、 CESAも販売自粛への積極的な... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月12日 04:39

コメント

僕はCEROが規制に走れなかったのは仕方がなかったと思っていますよ。
特にゲームが犯罪を誘発している根拠はありません。アメリカではこの手の裁判で、ゲームが与える影響について研究されているらしいですが、いまだに悪影響を証明できずにいます。しかも少年犯罪は増加も凶悪化もしていないのですから。
これではいくらCEROが年齢規制を訴えてもメーカーと小売店を説得するのは難しかったでしょう。

私はメーカーが取るべき態度は自主規制ではなく、はっきりとした証拠を突きつけ、戦うべきだったと思います。今業界にそんな余裕がないのかも知れませんが、マスコミのゲームたたきを止めないと取り返しがつかなくなりそうな気がしてならないのです・・・。

私ははっきり言いますが、業界に勝ち目はあると思いますよ。単にマスコミがゲーム=悪を演出したいだけで、一般の人はどうでもいいとおもっているんですから。

現に神奈川県知事のブログにゲーム規制に関するヤジが飛んでいますが、ほとんど規制反対を非難する声が上がらない。

投稿者 アッカ : 2005年06月12日 07:22

CEROの1番の問題点は、レーティングの審査をした後、
販売店に丸投げの点です。
法的な規制がないため、18歳以上推奨のソフトを小学生に販売しても問題がありません。
あくまでもレーティングは購入者への指針に過ぎないため、行政が動き出した事に対しては有難い事だと実際にお客様と向き合う店側の人間の私の感想です。
店側では別に規制があるならそれなりの対応をするので特に問題はありません(準備等大変ですが)。
困るのはメーカー側の方だけだと思います。
結局自主規制という曖昧な規制が1番の問題なのでは?
ゲームの進化によって、映像とゲームの境目が無くなりつつあります。そろそろゲーム業界もきちんとした規制を作り社会的責務を果たす時期なのかもしれませんね。
この問題は勝つ負けるといったレベルの問題ではなく、これから絶対に避けては通れない事ですから。

それと現段階でCEROには成人指定の分野ありません。
ですから、厳密には成人向けというゲームは審査を通らないようです。あくまでも○○才以上"推奨"ですから。
私個人の意見ですが、きちんとレーティングがされ、販売の規制が確実に出来るのであれば、成人指定ソフトを認めても良いのではないかと思います。
CEROの審査基準の為泣く泣く削除した表現を生かす為には、これから必要となってくると思うのですが。

投稿者 地方ゲーム店店員 : 2005年06月12日 20:09

コメントありがとうございます。

コメント欄で返答しようとも考えたのですが、ちと思うところがあって、別エントリーとしました。ご覧下さいな。

投稿者 tsurumy : 2005年06月13日 00:55

 TBありがとう。
ゲームはやった事の無いおじさん(私)には、とても勉強になります。初めて聞く言葉が多く難解ですが・・・

TBは1本削除しておきました。 

投稿者 有害図書撲滅 : 2005年06月16日 10:05