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2006年07月14日

オンライン・コミュニティ/サービスと社会、のコト

発熱地帯経由で読んだのだが、IT系のいわゆる「コンサル(コンサルタント)」な方が、大ヒットソフト「どうぶつの森」にビジネスチャンスの匂いを感じた、みたいなコトを書いている。

「どうぶつの森オンライン」がもし始まれば!?(日経BP)

一口に云えば、小学生女子からOLまでをユーザー層に抱え込む「どうぶつの森」を核にSNSを立ち上げれば、mixiに匹敵する凄えモノが出来そうですよーカネの匂いがぷんぷんしますよー任天堂さんアニメなんか作ってる場合じゃないですよー、といったような内容だ。

こうしたコンサル的物云いに強い不快感を抱かずにはいられない。


いやね、ビジネスチャンスを嗅ぎつけるのはいいワケよ。むしろドンドンおやんなさい。別に「ビデオゲームは古典的ビデオゲームであるべきだ、IT系(笑)の流行に擦り寄るとは何事ぞッ!」とか思ってるワケでもないし、ヒット商品の周辺にはそういう話もあって当然だと思うワケだし。ゲームとて時代の子、世間の潮流と軌を一にしなければ未来はないんだから。

ただね、近年、インターネット上のコミュニティと、社会という既存のコミュニティとの齟齬が問題になりまくってるワケじゃない。2ちゃん、出会い系、ネットゲー引きこもり、オークション詐欺、Winnyによる情報流出、etc…。

今、様々なオンライン・コミュティ/サービスは、いかに社会に溶け込んでゆくかを模索している最中なのだと思う。アマゾンとかの純粋サービスはいち早く溶け込んだ。Winnyは国策捜査で潰された。YouTubeは無法地帯(笑)。じゃあゲームは? ――少なくとも、小学生女子とOLとを一緒くたにして巻き込めるオンライン・コミュニティ/サービスが成立し得るほどの社会状況――いわゆる「リテラシー」やら「社会的位置付け」が成熟しているとは、とても思えない。たとえ商売として成立したとしても、事件が起きまくって後に禍根を残すコト必至だ(これはもう、確信を持ってそう云える)。先のコンサル氏は「企業の寿命30年の壁を越えるための成長戦略支援を行っている『百年コンサルタント』を創業」した方なのだそうだが、そんな近視眼的な手近のカネ儲け重視の姿勢じゃ、企業は百年保たないヨ?

そうした大局的見地からすれば、任天堂のWiFi対応の戦術は、カルティベーションが重視された素晴らしいやり方なワケだし、今現在に限って云えば、下手にオンライン・コミュニティなどに手を出すより、アニメなどで非ゲーム層にキャラクターと世界観を広める方が、将来的にはよほど大きな実りを手にするコトが出来るだろう。そもそも、どうぶつの森でSNSとか開いちゃったら、Wii版が成立しないって。


思うに。

さんざん書いているコトだけれど、ビデオゲームはその魅力の根拠を脳の活動においている(と断言しても良いだろう)のだからして、社会からの生理的な拒否反応を受けやすい宿命にある。これはビデオゲームならではの特殊性だ。しかも今は明らかに、十年前のような「家庭vsゲーム」という構図だけでなく、「社会vsゲーム」を考えなければならないフェイズにある(ココちょっと誤解招きそうな表現だなあ…例えるならつまり「インベーダーブーム」は社会問題にもなったけど、でもアレはやはり「家庭vsゲーム」問題に過ぎなかった、とかそういうコトね)。そうした立ち位置を十分理解した上で「今」の潮流に乗ったビジネスは、ビデオゲームというモノを、より一段の高みに乗せるだろうけれど…考慮しない浅いビジネスは、ゲームの将来に禍根を残すだろう。

――つうかね。

もうなんか、ウンザリなワケですよ。面白いモノっていったら、DAMのランキングバトルとかMJとか三国志対戦とか、今のインフラを利用してはいるけれど、アイデア自体は昔からあったモノばかり。別に否定してるワケじゃないよ。これらは、今のオンライン「ゲーム」の立ち位置ってモノをよくわかってる。んでもって面白い。でも残りは、どうでもいいような愚にもつかない、ユーザーを衰弱させてカネに変換するコトを目論んでるようなオンラインゲーム(とされるモノ)ばかり。鶴見に云わせれば、反社会的な「パブリック・エネミー・ナンバー1」、そんなのが、うたかたのように浮かんでは消えて浮かんでは消えてる。

ユーザーを衰弱させるサービスっていったい何なんだ。コミュニティの囲い込みと云えば聞こえはいいが、「ユーザーの依存」に依存しているモノばかりが目に付いて、腹立たしいコトこの上ない。

で。

「『ユーザーの依存』への依存」といえば、まず思い浮かぶのがパチンコ業界だ(トートツな話題転換だが、ゲーム業界と社会の関連についての思考実験には、パチンコ業界の観測がとても役立つのである)。例えば、先日の阪大生による母親殺害事件なんぞをみてみよう。この事件には、パチンコ(パチスロ)依存症が深く関わっているらしい。

阪大生母親殺害:殴打後に首を絞める 強い殺意反映か(毎日新聞)

…容疑者がパチンコ依存症に陥っており、母親から注意されてもやめられず、繰り返し注意する母親に対する不満が一気に爆発して殺害に至ったとみている。(中略)容疑者がのめり込んでいたのは、スロット型の「パチスロ」でギャンブル性が強い。パチンコ依存症になるとパチンコをしたい気持ちが抑えられなくなり、多額の借金を抱えたり、人間関係まで壊すケースもある。すべてにパチンコを優先させてしまい、仕事や勉強の意欲がなくなるのも特徴。

このニュースを読んで、ごく普通の人間はどう感じるだろうか?

その嫌悪感こそが、ゲームに対するネガティヴな報道や言論(ゲーム脳とかね)に対して、ゲームをやらない層が感じるモノと同等なのだというコトを、ずーっと子供向けゲームばかりを作り続けてきた鶴見は知っている(いやもう、ホントにそうなんですよ)。

んで、パチンコ・パチスロは、30兆弱の市場規模を誇っているが、それは今回の事件を見ても判るように、「ヘヴィユーザーの依存」に依存してこそ、この金額なワケだ。しかしそれは、社会的な反発をも引き起こす。そんなんでは今の業容を維持できるハズがない。縮小の未来しか視えない。

ならば同様に。

ゲームによるオンライン・コミュニティ/サービスがもし、「いわゆる」オンラインゲーム…というか、「ヘヴィユーザーの依存」に依存するビジネスを選択するのであれば、そこに未来があろうハズはない。XBOX360やPS3の「オンライン」が、現在のオンラインゲームの延長上に作られ、そしてユーザーを囲い込もうとするのだとしたら、さぞかしつまらないモノになりそうな悪寒すらする。

唯一有り得るとしたら、ゲーム単体で完結させるのではなく、ゲームとWEBとで相互補完的にコミュニティを形成する、というやり方か。でもそれなら、わざわざコンソール上でやらなくても、2ちゃん(&まとめサイト)やmixiのコミュニティとYouTubeがあれば十分な気もする。(キーボードすら標準装備されていない)コンソールでコミュニティを形成するメリットって何なんだろ?


なんか、もっと面白そうなコトが出来そうな気はするんだけどねえ。でも、そう思い続けながら早10年(汗)。あーどうしようかねえ。

カテゴリー: 新・嘘六百

投稿者 tsurumy : 2006年07月14日 16:27

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